コンラート・ユングヘーネル(指揮)、南西ドイツ放送交響楽団/J.C.バッハ:交響曲 ト短調 作品6-6
作曲:ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735 – 1782、ドイツ)
曲名:交響曲 ト短調 作品6-6
「大バッハ」としても親しまれる音楽の父、ヨハン・セバスティアン・バッハですが、彼の一族に作曲家が多いことはよく知られています。ヨハン・クリスティアン・バッハは、ヨハン・セバスティアン・バッハの息子で末っ子にあたる作曲家です。
ヨハン・クリスティアン・バッハは交響曲を約30曲ほど作曲しているようですが、現存している交響曲のなかで唯一、短調で作曲されているのがこの作品6-6です。
この交響曲は1769年に出版されていますが、18世紀後半、ドイツには「シュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒涛)」という文学運動がおこっていました。この運動では、古典主義の調和や格式を重んじる態度から脱却し、感情による表現が試みられました。
ちょうど、古典派が調和に重きを置き、それを否定して感情の表現を優先させていったことによってロマン派が花開いた、そのきっかけのひとつが「シュトゥルム・ウント・ドラング」だったわけです。たしかに、ヨハン・クリスティアン・バッハのこの交響曲では、暗雲がたちこめるような、ただならぬ気配や激情、苦悩があらわされているかのようです。そういう点では「シュトゥルム・ウント・ドラング」の雰囲気を反映したものといえるでしょう。そして、後に音楽が古典派からロマン派へと舵をきって歴史を変えていく作品のひとつとして、聴いておいていい一曲といえるでしょう。
紹介した動画はもともとリュート奏者であり合唱指揮者だったコンラート・ユングヘーネルの指揮による演奏です。南西ドイツ放送交響楽団は、財政上の理由からシュトゥットガルト放送交響楽団と統合し2016年に再出発した経緯がありますが、この動画はその統合後のものです。ここでは精緻で堅実な演奏を聴かせてくれているといえるでしょう。