ラインハルト・ゲーベル(ヴァイオリン、指揮)、ムジカ・アンティクヮ・ケルン/ビーバー:技巧的で楽しい合奏音楽
作曲:ハンリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー(1644 – 1704、ボヘミア→オーストリア)
曲名:技巧的で楽しい合奏音楽
ビーバーは優れたヴァイオリニストでもあったため、ヴァイオリンのための作品が有名です。また、高いテクニックを要する作品や、ヴァイオリンの本来の調弦を変えるスコルダトゥーラという手法を使った作品もあり、この「技巧的で楽しい合奏音楽(Harmonia Artificioso-Ariosa)」もそういった作品のうちのひとつです。
この作品は7つのパルティータからなる作品です。パルティータは、おおまかには組曲とおぼえておけばよいかと思います。組曲はいくつもの曲を組み合わせたものを指しますが、たいてい、序奏や前奏曲ではじまって、テンポの速い曲、テンポの遅い曲などで構成され、場合によってはそこに作曲上の技巧を凝らした変奏曲などが加わったりします。料理でいうところのコース料理を想像するとわかりやすいかと思います。
7つのパルティータのうち、通常の調弦が用いられているのは第6番だけで、それ以外はヴァイオリンやヴィオラ、第7番ではヴィオラ・ダモーレにスコルダトゥーラ(変則調弦)が用いられています。やはりところどころで響きがエキセントリックに聞こえるのは、スコルダトゥーラのせいでしょうか。
エキセントリックに聞こえるといえば、ビーバーはロマの音楽にも親しく触れていたといいますから、ヴァイオリンの演奏や作曲にロマの音楽・奏法が大きく影響していたともいえそうです。
紹介した動画で演奏しているのは、ラインハルト・ゲーベル率いるムジカ・アンティクヮ・ケルンです。もともと斬新で刺激的な演奏をすることで人気を集めた古楽演奏集団ですので、この「技巧的で楽しい合奏音楽」はまさに腕の鳴る作品なのではないでしょうか。特に、第3番の冒頭の前奏曲や、第7番のシャコンヌなどは弾きまくり鳴らしまくりで聴きごたえ充分です。