マガリ・モニエ(フルート)、マルコ・アルミリアート(指揮)、ミュンヘン放送管弦楽団/シャミナード:フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ
作曲:セシル・ルイーズ・ステファニー・シャミナード
(Cécile Louise Stéphanie Chaminade 1857 – 1944、フランス)
曲名:フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ 作品107
(Concertino for flute and orchestra, Op.107)
セシル・シャミナードは19世紀の終わりから20世紀初頭にかけて活躍したフランスの作曲家です。幼少時からピアノに親しみながら作曲もするほどの音楽の才能に恵まれ、やがてピアニストとしても作曲家としても名声を得た人物です。
曲名のコンチェルティーノ(concertino)は“小さな協奏曲”という意味で、日本語では「小協奏曲」と訳されます。
原則的に協奏曲(コンチェルト)は3楽章構成によって成り立っていますが、コンチェルティーノはもう少しこじんまりとしていて、シャミナードの「コンチェルティーノ」は単一楽章でできています。同じような用語に、小交響曲である「シンフォニエッタ」や短いソナタの「ソナチネ」があります。
シャミナードが「コンチェルティーノ」を作曲したのは1902年で、パリ音楽院からの依頼によってフルート科の修了コンクールの課題曲として作曲されました。
ちなみにこのパリ音楽院は、音楽教育機関としては名門中の名門なのですが、学生時代のシャミナードはパリ音楽院の作曲科に入学を希望していたものの、女性であるという理由で作曲科への入学は許可されなかったそうです。
さて、コンチェルティーノは“小さな協奏曲”ではありますが、協奏曲らしさはしっかり詰まっています。冒頭の主題までの前置きも短く、展開も長々と引きずることはなく、ハープの音によって中間部へ移行しますが、この中間部が通常の協奏曲の第二楽章にあたるでしょうか。
のどかな雰囲気も感じさせる中間部ですが、この間もフルートは常に音の上下動が要求されています。オーケストラによる主題の再現で中間部が終わると、見せ場のひとつであるフルートのソロがあり、やがて曲が締めくくられます。
ところで、この作品、主題となっている冒頭のメロディーが、童謡「ぞうさん」の“おはながながいのね”のメロディーと似ているので、日本人でフルートを演奏される方にはおなじみのメロディーなのだそうですが、お気づきになったでしょうか。一度気づいてしまうと、もう「童謡『ぞうさん』の『おはながながいのね』によるコンチェルティーノ」としてしか聴こえなくなってしまいそうなのが恐いのですが。
この動画で演奏しているマガリ・モニエはフランスのフルート奏者です。バッハから現代音楽までレパートリーが広く、ソリストとしても、フランス国立放送フィルの首席奏者としても活動しており、今後も活躍が期待される演奏家のひとりです。