瀬田敦子(ピアノ)/ヒナステラ:組曲「クレオール舞曲集」
作曲:アルベルト・エバリスト・ヒナステラ(1916 – 1983、アルゼンチン)
曲名:組曲「クレオール舞曲集」作品15
日本で知られる南米の作曲家というのはそもそも少ないと思うのですが、アルゼンチンの作曲家ヒナステラはそのなかでも比較的知られているほうかと思います。
今回紹介する、5つの曲からなる組曲「クレオール舞曲集」は1946年のピアノ作品です。
ヒナステラは作曲家としてのキャリアを進めていくうちに、より前衛的な作曲手法をとり入れていくのですが、この組曲「クレオール舞曲集」は前衛的な手法を使う前の段階に書かれましたものです。原始的で直情的なフレーズやアルゼンチンの民族色が特徴的ですが、変拍子や野生的な連打、不協和音などが使われているのが聴きどころのひとつです。
また、5つの作品からなる組曲なのですが、激しい曲調のものと、ゆったりとメランコリックな曲調のものとにわかれていて、激しさの迫力とメランコリーの物悲しさのどちらもがピアノ一台で表現されるところも、この作品の魅力といえるでしょう。
ちなみに「クレオール」(スペイン語では「クリオージョ」)とは、おおまかには植民地で生まれ育った人や物のことを指します。ここでは主にスペインの植民地で生まれ育ったスペイン人のことを指すと考えてよいかと思います。アルゼンチンは19世紀のはじめまでスペインの植民地でしたが、アルゼンチンで生まれたスペイン人はクレオールとして蔑視されることがあったそうです。このあたりのことも踏まえながらこの作品を聴くと、またいっそうと理解が深まるのではないでしょうか。
動画で紹介した瀬田敦子さんは大阪出身で現在はポーランドを拠点に活動しているピアニストです。ベートーヴェンやリスト、ラフマニノフの作品演奏でも知られていますが、特にヒナステラにおいてはスペシャリストとして高い評価を受けています。