キリル・コンドラシン(指揮)、モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団/カリンニコフ:交響曲第1番
作曲:ヴァシリー・カリンニコフ(1986 – 1901、ロシア)
曲名:交響曲第1番 ト短調
カリンニコフの交響曲は、特に日本では1995年にNAXOSレーベルからCDが発売されたのを機に一躍クラシック音楽ファンのあいだで熱狂的な人気を得ることになりました。ロシア音楽ファン、あるいは交響曲ファンでなくても、そんなに話題になっているのならとNAXOSのCDを購入された方も多かったかもしれません。NAXOSのCDは1000円前後ほどのお手頃価格でしたので、キャッチーなメロディーとコスパの良さも手伝ってこの曲は広く知られることとなったわけです。
ここでは、この作品の魅力をふたつ、あげておきたいと思います。
まずは、第一楽章で扱われるふたつの主題があげられると思います。冒頭の第一主題、続いて提示される第二主題(上の動画では01:40から演奏)、どちらもロシア民謡風のとても印象的な主題です。
特に第二主題は、憂いを含んだ甘美なメロディーでできていて、いつまでも耳に残るような主題です。これにやられたという方もきっと多いのではないでしょうか。一方、第一主題のほうは甘美ではありませんが、やはりロシア民謡風の味わいを持っており、こちらは第一楽章を通じて繰り返し演奏され、また第四楽章でも再登場します。
それにしても、こういったロシア民謡色の濃いメロディーというものには、どこか懐かしさをおぼえ、聴き手の心をつかんで離さない力があるようです。そして、この作品を聴いているあいだに、第一主題は何度も繰り返されるわけですが、これは同時に、曲のあちらこちらに「聴くポイント」を与えられているということでもあります。このメロディーはさっきも出てきたけど、今度は楽器が替わって演奏されている、次はキーが高くなった、と思ったら今度は明るい長調に転調して演奏されている、といった具合に「聴くポイント」をたどることができるわけです。
カリンニコフのこの作品の場合、甘美な第二主題と、さまざまに変形されながらもそれとハッキリわかる強さを持つ第一主題、どちらも耳に残るので「聴くポイント」がたどりやすく、作品に置いていかれることなく「ついていく」ことができます。作品についていくことができる、ということは、わかりやすい、ということでもあります。つまり、聴きやすい。そしてこの聴きやすさが、この作品のふたつめの魅力であり、作品全体をとおしての魅力になっているのだと思います。