ドゥアルテ・ローボ:死者のためのミサ(8声)

ハリー・クリストファーズ(指揮)、ザ・シックスティーン/ドゥアルテ・ローボ:死者のためのミサ

作曲:ドゥアルテ・ローボ(1565?~1646、ポルトガル)

曲名:死者のためのミサ(8声)

今回は17世紀ポルトガルの荘厳な合唱音楽の紹介です。

ドゥアルテ・ローボはルネサンス後期からバロック時代前半にかけて活動したポルトガルの作曲家です。

クラシック音楽でポルトガルといっても世界的に有名な作曲家の名前はなかなか出てこないかと思います。おそらくこのドゥアルテ・ローボや同時代の数人の作曲家、たとえばマヌエル・カルドーゾ、フィリペ・デ・マガリャンイス、国王ジョアン4世くらいしか顧みられていないかもしれません。しかも、当時の作曲家たちの作品は1755年のリスボン地震によって楽譜の多くが焼失してしまいました。

曲名の「死者のためのミサ(Missa pro defunctis)」は「レクイエム」とも呼ばれます。もう少し詳しく書くと、死者のためのミサそのものはカトリック教会の典礼儀式ですので、そこで使うための音楽を「レクイエム」と呼ぶというように考えるとよいかと思います。

典礼儀式であるミサは進行する構成が決まっていて、あとからつける音楽はその典礼文の構成にのっとって作曲されます。さまざまな作曲家がクラシック音楽の長い歴史のなかで「レクイエム」を作曲していますが、必然的にどの曲も同じような構成になっているのが「レクイエム」の特徴です。

レクイエム – Wikipedia

ちなみに、ドゥアルテ・ローボのこの「死者のためのミサ」の構成は以下のとおりです。

  1. Introitus(イントロイトゥス、入祭誦)
  2. Kyrie(キリエ、求憐誦)
  3. Graduale(グラドゥアーレ、昇階誦)
  4. Offertorium(オッフェルトリウム、奉献誦)
  5. Sanctus(サンクトゥス、聖)- Benedictus(ベネディクトゥス、副
  6. Agnus Dei(アニュス・デイ、神羊誦)
  7. Communio(コンムニオ、聖体拝領誦)

ここで紹介する「死者のためのミサ」は8声のためのもので、1621年の出版とされています。

ドゥアルテ・ローボはルネサンス後期からバロック時代に生きましたが、作風としてはバロックの革新性や華やかさよりも、ルネサンス音楽のもつ調和を重視したようです。

そして、ルネサンス音楽の時代の特徴として、それぞれの典礼文の箇所の冒頭にグレゴリオ聖歌の定旋律が残されている点も挙げることができるでしょう。平坦なメロディーで各パートが同じ音を歌っている箇所がグレゴリオ聖歌の定旋律にあたります。

さて、8声のための作品ですから、つまりパートが8つ、ソプラノ2部、アルト2部、テノール2部、バス2部の計8つがあります。しかし、実際に聴いてみると、8つのパートが幾重にも重ねられていながら、全編にわたって清澄で荘厳なハーモニーが成り立っていることがわかるかと思います。

個人的には「イントロイトゥス」の各パートがたたみかけるように上昇する箇所や、ただただ安らかな「キリエ」が聴きどころかと思います。

ちなみにこちらでPDFの楽譜がフリーで公開されています。ご興味ある方はこちらからどうぞ。

Missa pro defunctis (Duarte Lobo) – Choral Public Domain Library

 

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