アンドレイ・ガヴリーロフ(ピアノ)/プロコフィエフ:悪魔的暗示
作曲:セルゲイ・プロコフィエフ(1891 – 1953、ロシア)
曲名:ピアノのための4つの小品 作品4より第4曲「悪魔的暗示」
クラシック音楽では「超絶技巧」という言葉がときどき使われます。他に類をみない優れたテクニックという意味で芸術において使われる言葉ですが、演奏の困難な楽曲を聴衆の前で、適切なテンポで見事に弾いてみせるという点で、時間芸術である音楽においては特別な意味をもっているように思います。
プロコフィエフはロシアの作曲家ですが、同時に20世紀を代表する作曲家のひとりといえるでしょう。幼少時から作曲をはじめているのですが、この作品は作曲されたのが1908年、プロコフィエフが17歳という若い頃の作品です。
聴いてわかるとおり、曲調もテクニック的にも、とても挑戦的な作品といえるでしょう。この時代であれば、マーラーやリヒャルト・シュトラウスといったロマン派の音楽もまだまだ聴衆に支持されていたことと思います。一方で、ロマン派を否定し新しい音楽を生み出そうとする動きもありました。プロコフィエフのこの作品はまさにそうした動きを先導するような作品だったといえるかもしれません。
実際、プロコフィエフはその後、ピアノ作品だけでも「トッカータ」「その物自体」あるいは「戦争ソナタ」と呼ばれるピアノ・ソナタなどを作曲して近代音楽の代表格と称されるまでになりました。
「悪魔的暗示」は超絶技巧を要する作品としてよく知られており、またピアニストのコンサートのアンコールで弾かれることもよくあります。曲調におどろおどろしいところもありますが、ピアニストがアンコールで颯爽と弾ききってみせるようなエンターテイメント性をもっているのもこの作品の魅力でしょう。
動画で紹介したロシアのピアニスト、アンドレイ・ガヴリーロフは優れたテクニックをもつピアニストとしてクラシック音楽ファンにはよく知られています。また、今回の動画のようにコンサートでのエモーショナルな演奏で知られ、日本でも人気の高いピアニストです。