長田真実(オルガン)/スウェーリンク:半音階的幻想曲
作曲:ヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンク(1562 – 1621、オランダ)
曲名:半音階的幻想曲
17世紀から18世紀前半にかけて、北ドイツではオルガン音楽の隆盛がおこりました。何人もの作曲家や演奏家がオルガン音楽を発展させ、あのヨハン・セバスティアン・バッハにも大きな影響を与えました。この音楽家たちを総称して「北ドイツ・オルガン楽派」といいます。
この北ドイツ・オルガン楽派の元祖ともいえるのが、ここで紹介するオランダの作曲家・オルガニストであるスウェーリンクです。バロック時代のオルガン音楽といえばJ.S.バッハですが、J・S・バッハよりも前の時代においてはこのスウェーリンクをオルガン音楽の大家の一人と挙げることができるでしょう。
スウェーリンクが活動していたのは16世紀の終わりくらいから、亡くなる1621年までのあいだですが、この時期というのは、たとえばイギリスでは『フィッツウィリアム・ヴァージナル曲集』にまとめられる数多くの楽曲がつくられた時期であり、イタリアでは最重要人物であるフレスコバルディが若きオルガニストとして、また作曲家として名声を広める時期であり、あるいは、フランスではシャンボニエールがフランス・クラヴサン音楽を発展させはじめる時期とも重なります。
つまり、スウェーリンクが活動していた時期は、ヨーロッパの主要な国のそれぞれで鍵盤音楽が発展していく重要な時期だったといえるでしょう。特に北ドイツ・オルガン楽派の音楽は、J.S.バッハによって受け継がれ、やがてオルガン音楽あるいは鍵盤音楽全般が当時の最高峰ともいうべきレベルにまで達したわけです。
さて、「半音階的幻想曲」はスウェーリンクの代表的な作品のひとつといえますが、やはり聴いていて特徴的なのは半音階による浮遊感でしょうか。冒頭の半音ずつ下降するフレーズは短くてシンプルなものですが、それをベースにフーガとして展開していくところがこの曲の聴きどころでしょう。さらに、後半では、このフレーズが連続して繰り返されますが、繰り返すたびにフレーズ自体が一音ずつ下がっていくのも興味深いところです。
紹介した動画で演奏しているのは兵庫県姫路市出身のオルガニスト、長田真実さんです。現在、姫路市を拠点に、オルガンやクラシック音楽が身近に感じられるような活動もされているようですので、気になった方はチェックしてみてはいかがでしょうか。